ヤングケアラー支援事業の一環として、2月7日(土)に大松台小学校にて出前授業を実施しました。講師には、一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会(CAN)代表理事の持田恭子先生をお迎えしました。当日は二部構成で行われ、第1部は小学6年生を対象とした道徳授業、第2部は保護者向けの講演会として実施しました。
第1部|小学6年生 道徳授業
「ケアってなんだろう?〜つながりをもつ〜」
講師:持田恭子先生
一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会(CAN)代表理事。きょうだいに障がいのある当事者としての経験をもとに、ヤングケアラー支援や障害理解教育に取り組む。"自分を相手の立場や状況に置き換えて想像することが出来る人が社会に増えてほしい"という願いから、学校での出前授業や教職員・保護者向け講演を行い、子どもたちが孤立しない環境づくりと、地域・社会で支える仕組みづくりを進めている。
ヤングケアラーとは?
ヤングケアラーとは、家族に障がいや病気、精神的な不調などがあることで、本来大人が担うような家事や世話、感情面のサポートなどを日常的に担っている子ども・若者のことを指します。
特別な家庭に限った話ではなく、
- きょうだいの見守り
- 家事の手伝い
- 親の話し相手
- 通訳役
- 自分がヤングケアラーであるという自覚がない
- 社会的な認知がまだ低い
といった理由から、多くの子どもが支援につながれていない状況にあります。
「正解はひとつじゃない、考え続けることが大切」
授業では、「家族に障害があったら...」という問いを入り口にグループワークが行われました。
-
家族から何を頼まれそう?
-
どれくらい続きそう?
-
どんな気持ちになると思う?
子ども達は想像以上に具体的に考え、
「家事を頼まれると思う」
「脚が悪かったら階段で支えてあげる」
「自分が障害のある親・きょうだいを病院に連れて行ってあげる」
といった生活場面を想定した意見が多く出されました。
一方で、
「それがずっと続いたら、友だちと遊べなくなる」
「疲れてしまうかもしれない」
という率直な声もあり、
支援の継続性がもたらす負担や葛藤についても触れられました。
終盤には、
「みんなは、友だちにどうしてほしいか?」という問いが投げかけられ、子どもたちからは
- 優しくしてほしい
- 話を聞いてほしい
- 理解してほしい
- 温かい言葉をかけてほしい
- 手伝ってと言ったら手伝ってほしい
- できるだけみんなと同じように接してほしい
- 気を使わないで欲しい
- 嫌いにならないでほしい
といった、声があがりました。
子どもたちは、「自分が家族のケアをすることになったら・・・」
というイメージの中で、複雑な心境や葛藤が生まれることを学びました。
「相手の立場や状況に置き換えて
想像することが出来る人になることが大切」
そう子どもたちに語った持田先生。
授業の締めくくり
持田先生は、授業をこうまとめました。
「今日の話し合いに、
ひとつの正解はありません。
でも、相手の立場に立って
考えた時間そのものが、
とても大切です。」
正解・不正解で判断するのではなく、
分からないままでも考え続けること、話し合い続けることが他者理解につながる――そのメッセージが伝えられました。
さらに、
「私もこのクラスにいたかった」
「もし自分だったらどう感じるか、どうするかを、みんなが一生懸命考えていた」
と子どもたちの姿勢を讃え、「中学生になっても、高校生になっても、こうして話し合い続けてほしい」
と、対話を続けることの大切さを伝えてくれました。
子どもたちへのメッセージ
これから中学生になる子どもたちへ、持田先生は最後にこう語りました。
「成長していく中で、誰かと比べてしまうことがある。
でも、誰かと比べるのではなく、今までの自分と比べてほしい。」
そして、
「生きるとは、
希望に向かって自分を活かすこと」
そのために、
- 周りの人に目を向けよう
- 相手の気持ちになって考えよう
- あなたの話を聴いてくれる人がいる
という、温かく力強いメッセージが届けられました。
大人に向けては、
-
気軽に打ち明けられる環境を整えること
-
問題解決を急がず、最後まで話を聴くこと
-
「ひとりじゃない」というメッセージを伝え続けること
の大切さが強調されました。
第2部|保護者向け公開講座 |出前授業を通して私たちが伝えたいこと「つながりを持つことの大切さ」
第2部では、保護者や関係者を対象に、持田先生ご自身の体験をもとにした講演が行われました。幼少期、きょうだいに障がいがあったことで感じた孤立感や、学校でのいじめの経験について、率直に語られました。母親が学校に出向き、担任教師と話し合いの場を持ったことで、クラス全体での対話や“和解”の時間は生まれました。しかし、それは先生の前での体裁的なものであり、裏ではいじめや無視が長く続いていた現実もあったといいます。
その経験は、人への不信感を抱くきっかけにもなりました。一方で、自身の強い「正義感」が孤立を招いていた側面もあったのではないかと、振り返られました。
また、障がいのある家族に対して抱いていた
-
心から大切に思う気持ち
-
周囲の目が気になってしまう恥ずかしさ
という相反する感情を同時に抱えていたこと、そしてその思いを誰にも打ち明けられなかった苦しさについても、丁寧に語られました。
なぜ今、ヤングケアラーの話が必要なのか?
― 時代背景から考える ―
講演では、ヤングケアラーが注目されるようになった社会的背景についても説明がありました。
近年、
-
核家族化や地域のつながりの希薄化
-
共働き世帯の増加
-
医療の進歩により、医療的ケアを必要とする家族と共に暮らす家庭の増加
-
不登校、ひきこもり、精神的な不調など、家庭内の課題の複雑化
といった社会の変化が進んでいます。
その中で、家庭の中で起きている「ケア」が、外からは見えにくくなっています。
持田先生は、
「これまでは“家族のことは家族で”とされてきたけれど、それだけでは支えきれない時代になっている」
と語り、
ヤングケアラーの問題は、特定の家庭の問題ではなく、社会構造の変化の中で生まれてきた課題であることを強調されました。
家族だけで抱え込まないために
講演ではさらに、
-
障がいのある本人の支援制度が長年かけて見直されてきた一方で
-
その家族は、支援者としてみなされてきたので支援の対象ではなかった
という現実があります。それが近年見直されてきました。
親は愛情をもって一生懸命子育てをしています。それでも、日々の生活の中でどうしても行き届かない部分が生まれてしまうと、きょうだい児に頼ってしまうことがあります。きょうだい児は親を助けたいため、頼まれたケア役割を引き受けるという家族の構造があります。
それを「家族の問題だから」として、家族だけで解決させようとするのではなく、
「地域や社会が支えられるようになることが必要」
という視点が示されました。
質疑応答より
講演の最後には、保護者から
「知らず知らずのうちに、子どもをヤングケアラーにしてしまっているのではないか」
という不安の声が寄せられました。
これに対し持田先生は、
「(親御さんが)
ヤングケアラーに、“する”のではなく、
ヤングケアラーとは自然に
“なる”ものです。
家族をケアする経験は、
決して悪いことではありません。」
と語りました。
家族を助ける経験には、子どもを強く、優しく育てるポジティブな側面もあります。問題は、その過程で生まれる不安やしんどさを、誰にも言えずに抱え込んでしまうこと。
「人には言えない気持ちやしんどさを
共有できる場があったり、聴いてくれる
相手や仲間がいることが大切です。」
また、親から言われて嬉しかった言葉は?という問いに、
「手伝うことが当たり前にならずに”ありがとう”という言葉をかけてほしかった」と
ありがとうが持つ力について
保護者に向けて穏やかに語られました。
おわりに
今回の出前授業・講演会は、「ヤングケアラーを知る」ことにとどまらず、子ども一人ひとりの気持ちにどう寄り添い、どう受け止めていくのかを、子ども・大人それぞれの立場から考える貴重な機会となりました。家庭でも、社会においても、自分を相手の立場や状況に置き換えて想像することの重要性を強調していた持田先生。こばと会では今後も、常日頃の対話を大切に、ヤングケアラー支援に取り組んでいきます。













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